私が最近行っている筆とペンを使った修作や研究を拠り所とするタイポグラフィを通して、ビジュアル・アイデンティティを作りたかった。いつも一人、目的や文脈のない「最初の場所」であるドローイングを描くことが幸せだ。
しかし「ただ描きまくる」というその出発点から私はイメージ構築の新しい方法を発見したが、タイポグラファーやグラフィックデザイナーとしての自分の人生に既視感を感じてもいた。
そこでイタリアとの国境に近いスイスのカステルミュール宮殿で開催されるミリアム・カーンの展覧会のためには、しばしば実践していた手書きの「自由なドローイングの方法で文字を書くだけ」という効果を使わない書体を開発することにした。私がよく自覚している自分の能力から距離をとりたかった。あるいはもっと発展させたいと思った。
私はインクをつけた筆を紙の上に強く、あるいは軽く置くことだけをした。ちょっと動かしたり動かさないようにしてみた。そうして現れた形を集め、次にそのパーツを読みやすい字形への合成を試みると、アルファベット 「fremd」が完成した。このアルファベットを山村での複数のイベントの告知ポスターや、出版物『Fremd』の中のディスカッション参加者の言葉に使った。
出版物『Fremd』は、展覧会と講演の終了時に完成した。ミリアム・カーンの力強い絵画で見事に埋め尽くされたカステルミュール宮殿の特別な部屋を、読者に没入するように体験してもらい、また作家、哲学者、建築家、活動家、学芸員などの考え方にも触れてもらいたかった。私には彼らの誰もが大変特別な存在に思え、その内容も特別に個性的な方法で扱わなければならないと感じたのだ。あなたもそう感じてくれたら 、うれしい。