TDC立花文穂
NUMBERS DESIGN BY
AWARD
2023
特別賞
立花文穂

球体9 オポチュニティーズ

立花文穂|球体9   オポチュニティーズ

僕の古い友人は、かつてバンドでリズムボックスを担当していた。ボタンを押すだけ、スタートのタイミングが肝心と言っていた。
インキを練ってローラーに擦り付け、スイッチボタンを押してモーターが作動する。何本ものローラーが一斉に回り、版をのせる台が左右に動いて一定のリズムを刻む。給紙するためのエアーが呼吸し、プレスを始めると胴が回転してカコーンと音を轟かす。
僕は行き場のなかった大きな活版印刷機を「心機一転」、機械を「機会」と捉えて「臨機応変」、楽器として「楽機」に変えた。「INDUSTRIAL REVORUTION」
そして、「IL TRENO」(ギターとピアノ)に参加してもらってセッションした。録音してつくったのがこの「球体9 OPPORTUNITIES」。
この2枚組のレコードは、リズムボックスの友人にあてた手紙でもある。
音源をプレスしてレコードをつくる。
回るレコードの溝に針が載って音が出る。
母型に鉛が流し込まれて活字が生まれ、
組んでプレスすると言葉になる。
このことを体現したくて僕がそおした実験である。
このよくわからない出来事を拾い上げて評価してもらえたことは有り難いことで、東京TDCがそおいう集団であることが僕は嬉しい。
「IMAGINE PEACE」

立花文穂

立花文穂 Fumio Tachibana
1968年広島市生まれ。”MADE IN U.S.A.”(佐賀町エキジビット・スペース,  1995年)をはじめ、”デザイン立花文穂”(ギンザ・グラフィック・ギャラリー, 2011年)、”印象 it’s only a paper moon”(水戸芸術館現代美術ギャラリー, 2022年)など国内外で展覧会を多数開催。
2006年より責任編集とデザインをする不定期刊行物『球体』をはじめる。現在、9号まで刊行。自らデザイン、製本、出版する作品集のほか、著書に『かたちのみかた』、『Leaves   立花文穂作品集』(共に、誠文堂新光社刊)がある。