本作は、日頃描き溜めた絵日記の中からいくつかの絵を抜粋し、アニメーションにしてみるところから始まりました。その日感じた新鮮な感覚を崩さぬように、小さなフリップブックの最初のページに絵を書き写し、次のページからは、前のページの線に沿って動きを描いていきます。そうすると、全ての線が留まっていられず、絵の中で線たちが関係を持ち始め、共鳴したり反発したりしながら次の展開へと影響していきました。先がわからぬまま絵の中の出来事が進み、翻弄されていくうちに新たな考えが浮かび上がっていく様は、まるで夢が生成されていくかのような感覚でした。そのように出来上がったアニメーションは、最初の絵日記の文章の意味合いからはかけ離れたものになっていったので、出来上がった絵を見て、新たな詩を考えました。そうして次の絵を描き、詩を考え…を繰り返す途中で音楽担当のhonninmanに詩も発声してもらい、絵、詩、声、音楽を交換しあいながら、もういいか…! というところまで制作しました。このように、日記の視覚表現から始まり、視覚表現を詩(文字、声)で表現することを行ったり来たり遊んでいくうちにだんだん一体となっていった作品になりますので、今回の受賞は、そこを汲み取って、あるいは感じ取っていただけたのだろうかととても嬉しく思います。ありがとうございました!
グランプリ
幸洋子
ミニミニポッケの大きな庭で


幸洋子 Yoko Yuki
映像作家。1987年、愛知県名古屋市生まれ、東京都在住。幼少期から絵を描くことやビデオカメラで遊ぶことが好きだったため、アニメーションに楽しさを見出し、日々感じたことをもとに、様々な画材や素材で作品を制作している。主な作品に、幼少期の曖昧で不思議な記憶をもとに制作した「黄色い気球とばんの先生」、横浜で出会ったおじさんとの一日を描いた「ズドラーストヴィチェ!」、鴻池朋子原作の詩「風の語った昔話」から発想を得た「夜になった雪のはなし」、清水煩悩のミュージックビデオ「シャラボンボン」がある。自身の絵日記からインスピレーションを受け制作した最新作「ミニミニポッケの大きな庭で」は第75回ロカルノ映画祭にてプレミア上映される。