これは、東京の銀座にある巷房で開催した個展の会場写真です。ここで発表した立体は、自分がデザインした日本で販売されている牛乳のパッケージデザインの部分を拡大し、FRPで制作したものです。以前この牛乳をテーマに、デザインの視点でパッケージ表面から牛の餌や糞まで遡る「デザインの解剖展」を開催したことがありましたが、今回の個展では同じ物をテーマに、アートとして切り取ることを試みました。身近な商品も、部分を切り取るとまるで現代美術の領域に入ってくるのではないかと思えたからです。そして展覧会では、パッケージを細かく廃棄する状態にし、それを円形の形に再構成した作品も発表しました。これはあえて語るまでもないことですが、大量生産される物のゴミ問題、大きくは環境問題へのアプローチでもあります。デザインの成立から解剖、そしてアートへ。自分にとって、これらは別々のものではなく一つの流れの中にあります。この度の作品をこのような場で高く評価いただき、感謝いたします。ありがとうございました。
特別賞
佐藤 卓
佐藤卓展「MILK」





佐藤 卓 Taku Satoh
グラフィックデザイナー
1979年東京藝術大学デザイン科卒業、1981年同大学院修了。株式会社電通を経て、1984年佐藤卓デザイン事務所(現TSDO)設立。「ニッカウヰスキー ピュアモルト」の商品開発から始まり、「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」のパッケージデザイン、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」のグラフィックデザイン、「金沢21世紀美術館」「国立科学博物館」のシンボルマークなどを手掛けるほか、商品や施設のブランディング、企業のCIを中心に活動。また、NHK Eテレ「にほんごであそぼ」アートディレクター、「デザインあ」総合指導、21_21 DESIGN SIGHT館長を務め、展覧会も多数企画・開催。著書に『塑する思考』(新潮社)など。