19世紀はポスターの正式な誕生という点で重要な役割を果たした。書籍から広告まで、ポスターが自立した一つのジャンルとして登場したのが19世紀である。大き目のフォーマット、カラー紙、カラーインク、リトグラフに加え、タイポグラフィのレベルで新しいデザイン言語が確立された。それまでポスターのデザインには大型の文字タイプフェイスだけが使われていたが、この媒体のみのために考案された新しいオリジナルのポスター・タイプフェイスが、19世紀初頭から次第に普及した。アーカイブと特別なコレクションを幅広くリサーチした結果できあがった「Affichen-Schriften」シリーズは、その時代の代表的なディスプレイ・タイプフェイス4種類をデジタル処理で再構成したものである。「Doppel-Mittel Egyptienne FSL」と「Schmale Egyptienne No.12 FSL」はどちらもEduard Haenel(マクデブルク/ベルリン)が発表した活字をベースにしている。エネルは、1830年代にドイツの印刷業界に新しいディスプレイタイプ・デザインを紹介したデザイナーの一人である。このセレクションに、Tarbé & Cie. (Paris) による初期のサンセリフ体「Antiques FSL」(当時のフランスのポスター・タイプフェイスに見られる実験的で華麗なサンセリフ体を暗示)と「Breite-Fette Antiqua FSL」(1840年代後半に起きたドイツ連邦の目覚ましい成長を具象化するワイドなファットフェイス)を合わせた。言語サポートを大きく拡張し、多様なフォント特有の「オープンタイプ」機能を加えることにより、コンテンポラリーな用途に合わせて昔ながらの形状をデジタルフォントに変換した。
タイプデザイン賞
Pierre Pané-Farré
Affichen-Schriften FSL



Pierre Pané-Farré(ピエール・ペイン・ファーレ)は、ライプツィヒを拠点とするタイポグラフィックデザイナー。Stephan Müller(シュテファン・ミューラー)、Reymund Schröder(ライモント・シュレーダー)両氏と共同で「Forgotten Shapes」を設立。デザイン業の傍ら、後進の指導、ワークショップの開催、タイプデザインの分野の歴史研究にも熱意を注ぐ。現在は、19世紀ドイツの木製活字制作者を研究。レディング大学のEric Kindel教授とともに、18世紀末から19世紀初頭にかけてのフランスにおけるステンシル・ポスターの出現と発展を調査している。世界中で「ウォルター・ティーマン賞」、「ベスト・ブックデザイン金賞」等を受賞。