二人のアーティスト、ジョナサン・エレリーとローレンス・ウェイナーの創造力溢れるやり取りから生まれた「HERE IT IS HERE IT AINT」は、前書きも付録も脚注もないという意味で典型的なアーティストブックである。また、タイトルが示すようにその意味は決して明確ではない。ジョナサン・エレリーとローレンス・ウェイナーの作品には明らかな違いがあるが、それらが同じ文脈の中に心地良く存在していることは明白である。二人にとって、アートと生活は客観的で具体的な統合体として現れる。彼らの言葉は会話の触媒として働き、その組み立てが魅惑的なミザンセーヌを紡ぎ出す。
DOES NOT REFER TO ANYTHING BUT ITSELF
フラグメントが格闘し、衝突し、割り込み、光沢ページの四隅を拮抗させる。有形の言語であるウェイナーの作品が、エレリーの有形の抽象作品に反撃される。矢印が動き、起伏のある道をテープが流れ、ありふれたドットとダッシュが衝突する。モールス信号による会話である。あらゆるものに階層がない。言葉、描画、オブジェクト、写真が同じサイズで使われ、状態の変化を起こす。
ブックデザイン賞
Jonathan Ellery + Lawrence Weiner
HERE IT IS HERE IT AINT



Lawrence Weiner(ローレンス・ウェイナー 米国人、1942年生まれ)は、言語をベースとした作品で有名なニューヨーク在住のアーティスト。作者と見る人の関係を問い直したことでも知られる。1960年代のコンセプチュアル・アート運動の代表的なアーティストとされる。2007年にはホイットニー美術館で大規模な回顧展が開かれた。その作品は、近代美術館、シカゴ美術館、大英博物館、ポンピドゥー・センターなどでコレクションとして展示されている。代理人はニューヨークのマリアン・グッドマン・ギャラリー。
Jonathan Ellery(ジョナサン・エレリー 英国人、1964年生まれ)はロンドンのバーモンドジー在住。映画、写真、舞台、彫刻、印刷、ブックアート全般を手掛ける。コンセプチュアルなアプローチは、シンプルな、ときに不条理な視点で日頃の悩みを観察する。ニューヨークのアンドリュー・ロス・ギャラリーのほか、ロンドンのロンドン・ニューキャッスル・プロジェクト・スペース、ワッピング・プロジェクトでも単独で展覧会を開催。