ひです(Type design)
「ひです」は、キリシタン版『ひですの経』の古活字をデジタルフォントとして復刻した仮名書体です。
肥前国出身の日本人コンスタンチノ・ドラードは、天正遣欧少年使節に随行するローマ旅行において活版印刷術を会得し、帰国後キリシタン版を印行しました。帆船時代の幾年にもわたる旅の果てに印刷機を持ち帰り、本邦初の西洋印刷術による出版事業を立ち上げる。その仕事の大きさは想像を絶するものです。
書体デザイナーは巨人の肩の上に立つ存在です。有史以来、文字を書いたり刻んだりしてきた人々の遺産を受け継いで、その務めを果たしています。ドラードもその先人の一人であることは言うに及びません。「自分が役目を終えるとき、巨人の背が一ミリでも伸びていたらいいな」時折そんな不遜なことを考えてしまいます。
このたびタイプデザイン賞を受賞したことで、励ましていただいたような気持ちになりました。心より御礼申し上げます。