記憶のステッチ(Trial)
本作は、卒業制作で発表した刺繍作品の中のひとつです。
“記憶と記録は交わって、新しい記憶として再構築されている” ということを、私自身が生まれた日の新聞で表現しています。
読めそうで読めない文字列は、記憶というものの曖昧さを表すだけでなく、タイポグラフィの実験としても面白い試みになったと思います。
新聞という紙のモチーフをピクセルに置き換え、さらにそれをアナログな手法で再現したということ、また、見慣れたサイズのものを、あえて大きく引き伸ばしたことで、非日常を感じさせる面白さや、物質としての密度と強さを作り上げることができました。
クロスステッチという技法を用いたのは、記憶と記録のかけ算という意味を込めていますが、何より縫いたいという気持ちが大きかったように思います。
手作業の力を再認識することができた、とても嬉しい受賞でした。
これから先も、手を動かし続けられたら幸せです。