空想正倉宝物図(Trial)
受賞作品は、多摩美術大学グラフィックデザイン学科の卒業制作である。4年間の短い夢の集大成は、今自分が思える限り美しいものを作るということで落ち着いた。
アイデアを求めて様々な文献を漁っていると、明治八年に正倉院の収蔵品記録のために制作された「正倉院御物図」という図譜を見つけた。私は、そこに描かれた不思議なかたちの宝物達が何に使うものなのか、なぜこのかたちになったのか、答えが見えぬまま想像を膨らませる事がとても楽しく、この感覚を制作の軸とすることに決めた。
正体不明の不思議なかたちの宝物を三十点に渡って記録したこの「空想正倉宝物図」は、正倉院御物図の制作当時の技法の再現とともに、自らが空想した宝物とそこにあしらわれた紋様もデザインされている。
私個人の力ではこの結果は成し得なかった。指導教授の澤田泰廣氏が制作プロセスの監修、表具師・小渕博由氏が表装、家族や恋人、友人からも様々なアドバイスをいただいた。人に恵まれた制作だった。制作に関係した全ての人に感謝します。ありがとうございました。