建築を考える(Book design)
スイスの建築家、ペーター・ツムトアの講演原稿を中心にまとめられた Peter Zumthor, Architektur Denken, Birkhäuser, 2010の邦訳本。 2006年初秋、みすず書房の小川純子さんがツムトア氏のアトリエを訪ね、邦訳刊行の希望を伝えたことに始まる。帰国後、小川さんから僕に「ピーター・ズントーは知ってますか? もし出版の了解が得られたら、装丁を」と言われ、「もちろん。ぜひとも!」と。翌年の春、正式に了解の返事。「翻訳は、ドイツ語版からに(英語版は自分の言葉の感じがしないと)。名はピーター・ズントーではなくドイツ語発音のペーター・ツムトアで。そしてエッセイ集のような読む本として作ってほしいので訳者は文学畑の人に。」との要望が添えられて。以来、訳者の鈴木仁子さんと小川さんは、数年かけてツムトア自身の言葉を日本語に紡ぐ。小川さんも僕もツムトアのどこに惹かれるのか、言葉にできないでいる。その言い表せないものが、装丁という小さな建築物にならないか…という大それた目標に向かい、長い長い幸福な苦しみの時間を過ごした。