(株)モリサワポスター「Man and Writing」
世界の古文字を取材して歩く仕事は、1984年のモリサワカレンダーから始まった。もう12年も続いた仕事である。博物館や、遺跡を訪ねることは、何千年もの過去の文化に触れることができるよろこびがある。しかし、時の権力者によっていつくしまれ、秘宝化されてきた品々には、長い時間を経て破損され、泥をかぶり、色を失って、そのどれもが美しいと感じるわけではない。時代の先を行こうとするデザイナーとしての職業的な眼からみると、あくまでもそれは考古学の世界であり、どこかカビ臭い。次の年を飾るにふさわしいカレンダーとして明るい指針に欠ける。この仕事はそうした古代と現代を振子のように動かねばならない矛盾を常に抱いていた。タイポグラフィは今、デザインの重要なテーマとして再び浮上し始めている。そんな晴れがましい明かりの中に、この「人間と文字」が評価されたことは大きなよろこびである。