自主制作作品「高尾山のキクイムシ」
今回の作品は樹木に刻まれた虫の痕跡を文字に見立ててまとめたものである。おおよそ文字の定義からはずれたものではあるが、そのかたちだけを見ると、漢字に触発されて描いたミショーのドローイングや、文字フェチであったバルトの〔書字〕に似た味わいがありなかなか面白い。人の世には文字があふれているが、それ以外の世界も文字的なかたちでいっぱいである。文字も記録する、読むといった機能をはずしてしまえば文字的なかたちになるわけで、つまり地球は文字的なかたちでいっぱいということになる。大から小まで、人工的なかたちから自然のかたちまで、文字的なかたちを集めたら大曼陀羅が出来上がるのではないだろうか。